保険パーシャルデンチャーの制作設計思想への新たな提案

 

まずはこちらの動画ご覧ください。
保険のパーシャルデンチャー制作への提案です。

私は歯科技工士として30年以上、義歯歯冠修復などの「モノ創り」に対して、保険・自費問わず追及し続けてきました。

しかし、私が仕事を始めた頃と比べ「保険での補綴物」設計思想はなんら変わっていないと感じています。

例えば パーシャルデンチャー(局部床義歯) 制作においては咀嚼補助器官としての役割のみならず、「嚥下作用」「顎の位置」「咬合」など、ほんの僅かな「人工物形態」が与える影響などが報告され始めている最中です。

進歩の為には、義歯制作時の僅かな「変形」、歯牙の微妙な「咬合」、顎の位置の「高さ」「片寄り」の状態など、

 各個人の特徴を比較検討する為の、「歯牙形態」「歯列彎曲形態」「顎の位置」等を解析した記録データ

 各個人の人口物制作過程・完成時の誤差・調整 を行った記録データ

 口腔内セット時・経過時の、口腔内での変化・誤差・調整 を行った記録データ

これら全て、把握する事が可能な制作システムが、将来的に不可欠です

現時点では、まだまだ先の将来的希望でしかありませんが、これまで、歯科における「口腔内形態解析診断」などと言ったら、各個人や小さな研修会内で得られるごくオリジナルな研究情報しかありませんでした。

たとえ保険制作だとしてもそもそもの「設計思想」から変える必要性を提案したいと思います

そこで今回、保険におけるパーシャルデンチャー(義歯) 制作時ポイントを2つ提案し、掘り下げてみます

 

 

Ⅰ 基準設定・計測・分類し、データとして残す

歯科の人工物制作において、これまでこの様な事は全く行われて来ませんでした。現時点(2019年現在) においてMRI・CAD/CAM・口腔内スキャナー機器が導入され、骨格・歯列・歯牙形態 などがスキャン・比較可能となってはいますが、実際の人工物制作現場における基準設定・計測・分類 などの具体的参考となる記録取得方法になっておりません

例えば MRIのデータと口腔内歯列のスキャンデータがあるとします。ほぼ全ての方の骨格は「左右非対称」で、ほほ全ての方の歯列・歯牙も「左右非対称」です。しかし、実際の患者さんの「姿勢を統一した定義」はありません。患者さんの「姿勢」「悪い体癖」の「定義」も不統一、診断医の「見識」も不統一。当然のことながら姿勢が統一されて無いですので、人工物を正確に「左右対称」に作ったつもりが、口腔内では「左右非対称」に錯覚を起こしているように観えたりと、比較が出来ない記録取得方法が、現在の「データの集め方」なのです。決して「左右対称」が良いと言うのではありません。

つまりは、各歯科施設・医院によってMRIデータ・口腔内スキャンデータの、骨格・歯列・歯牙形態「左右非対称状態」「姿勢状態」も、記録取得方法がバラバラで、統一されてい無現状が問題なのです。技工制作の現場にも、骨格や歯牙・歯列・顎位などの「アシンメトリー」「姿勢」カテゴリー情報なども取り込む必要があります。

最先端の歯科治療がこうなのですから、「保険制作の人工物」は尚更です。その為、保険義歯制作時において、今からでも、これらを網羅したデータプログラミングの「基礎作り」として、基準設定・計測・分類 を提案いたします。(具体的な項目としては、いづれこのサイト内にて解説致します。項目の一部は動画にて解説しています。ご確認下さい)

 

 

 

Ⅱ 人工物制作完成時模型を壊さず咬合器装着状態で完成し、チーム全体で検討可能とする

一般の方はあまりご存じ無いかもしれません。殆どの保険のパーシャルデンチャーなど、義歯制作時には、最初に型をとった際に作る「石膏模型」を残していません。殆どのケースは、咬合器から既に石膏模型は取り外されております。つまり、義歯が出来上がって患者さんの目の前にある時には、既に石膏模型は壊され、咬合器からも外されているケースが95パーセント以上、その様な状態であると考えられます。この事実は歯科の将来的進歩する為に、出来るだけ早く改善したい案件だと私は考えています。

完成した「人工「石膏模型、患者さんと歯科医との共同作業で「顎の位置」を再現した「咬合器装着の状態」これら全てが揃っていない状態「人工物口腔内で調整するという方法ほど「作業効率の悪い技術」はありません。(歯科オーダーメイド製品の生産効率が向上しない理由がこれです)

補綴物を調整するという事は、つまり、ダイレクトに顔面下部にある「硬組織」を調整する事ですので、たとえ数ミクロンの調整でも「調整の記録」「ミスの記録」「別ケースへの改善模索する為の記録」として、歯科医師のみならず、衛生士・助手・歯科技工士 チーム全員「データを共有」して「検討する作業」が、今後「医療的評価」を左右する重要な技術のひとつとも考えられます。 (日本国内の「保険制度」は優れていて、他国よりも安く出来る今の程度で十分。日本国内の技工士は低賃金・長時間労働のブラック職業でそんな事に時間掛けてられるか、との声も聞こえてきそうですが、医療的価値を上昇させる施策は今後必要です)

 

 

 

従来から、パーシャルデンチャーは、歯牙が抜歯に至った後の「咀嚼補助器官」としての役割を果たしてきましたが、昨今、口腔内唾液の殺菌作用や、咀嚼作用の重要さ、誤嚥作用の重要さ、唾液の発生量および誤嚥と、咬合の関連、「顎位」の全身性疾患に及ぶ影響医科の分野からも少しずつ報告されて来ております。(このサイトのブログ内においても、脳神経外科医による「顎位」「線維筋痛症」との関連報告を記事にしています。 リンクはこちら  )

 

 

私が知る限り、以上のように保険の義歯制作においては、およそ30年以上前から変わってい無い「技術・思想」であり全く進歩の無い状況だと認識しています。一般の方々にも医療的に重要な価値がある「技術・思想」のひとつだ評価して頂く為にも、これら「製作工程」「改善」する必要があると、私から提案させて頂きます。

 

 

 

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